■労働基準法改正。現場を置き去りにした「理想」が、日本の基盤を揺るがす懸念...。

現在、日本の労務環境は「40年ぶりの大改正」という歴史的な転換期を迎えてる。 2025年4月の育児・介護休業法改正に続き、2026年には「14日以上の連続勤務禁止」や「勤務間インターバル制度の義務化」といった、労働時間の根本的な規制強化が予定されている。

しかし、日々現場を支援する立場として、あえて問いかけたいことがある。

「この改正は、本当に現場の生産性を高めるのか。それとも、日本の産業構造を弱体化させる引き金になるのではないか?」

☑ 現場が直面する「理想と現実」の乖離

例えば、工期が迫った建設現場や、24時間稼働の工場。 11時間の休息を義務化し、翌日の始業時間を後ろ倒しにすれば、工期は延び、コストは増大する。人手不足が深刻な中、代替要員を確保できなければ、結局は「受注を断る」か「事業を縮小する」という選択肢しか残されない。

今回の改正で注目される「勤務間インターバル制度」。労働者の健康を守るという大義名分には、誰も異論はない。しかし、これを建設業や製造業といった「現場」に一律に当てはめることには、極めて高いハードルが存在する。

☑ 「働きたくても働けない」が招く弱体化

日本の強みは、現場の「熟練の技」と「柔軟な対応力」に支えられてきた。 しかし、厳格すぎる規制は、以下のような負の連鎖を招くリスクを孕んでいる。

技能伝承の断絶

現場に滞在できる時間が物理的に削られ、若手への技術教育の機会損失

国際競争力の低下

労働コストの増大と生産スピードの鈍化により、海外企業との競争に劣勢

個人の意欲減退

「短期間で集中して稼ぎたい」「自らのスキルを磨くために時間を使いたい」という個人の自律的な働き方までもが制限

    ☑ 必要なのは「一律の制限」ではなく「現場への投資」

    私は、単に規制に反対しているわけではない。労働環境の改善は不可欠である。 しかし、現場の状況を無視した「数字ありき」の規制は、日本のものづくりやインフラ維持の基盤を崩しかねない。

    今、国や企業に求められているのは?

    • 人手不足を補うためのDX・自動化投資への、より強力な財政支援。「規制」と「支援」のパッケージ。
    • 現場の特性(天候に左右される屋外作業や緊急対応等)を考慮した特例の整備等、業種別の柔軟な運用。
    • 無理な工期や低価格発注を強いる「商慣習」そのものへのメス、発注者の意識改革。

    結び

    就業規則や36協定を見直す際、我々は「法令を遵守すること」だけを目標にしがちである。 しかし、私たちが守るべきは、その先にある「現場の誇り」と「事業の持続性」ではないか。

    法改正の波をどう乗り越え、いかにして「日本の強み」を維持し続けるか。 株式会社Rac solutionは、経営者の皆様と共に、この難局に対する最適解を追求し続ける。